「炭火焼 ゆうじ」が使う道具「YK-T」
- 本当に「うまい!」と震える焼肉のために
- 日本中の焼肉店を巡り、「うまい! なんだこれは?」と思える焼肉と焼き台の相関関係に気づいたという樋口さん。焼肉道を極める中で、究極的にうまい肉を焼くためにはベストなロースターを自分で作るしかない、という結論に至ったそうです。
- そんなわけで、釜浅商店にご相談いただいたのが2010年頃のこと。そこから約1年試作を重ねた末に出来上がったのが「YK-T」でした。以来、10数年にわたって焼肉店はもちろん、一般のご家庭でも愛され続けてきたベストセラーです。
- 愛着メモ
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- POINT 012種類の網が使い分けられる
- このロースターの最大のポイントは、「肉によって網を変えられる」こと。蓄熱性が高くサッと肉の表面を焼ける鋳物網と、炭火の遠赤外線の熱をそのままホルモンに届け、脂を下に落とすという利点もあるステンレス網を両方使えるようにしたことで、1台でどんな種類の肉も美味しく焼けるように。
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- POINT 02装飾を排除した、洗練されたデザイン
- 美味しく食べるための機能を徹底させると、美味しさを感じさせるデザインになる。「無駄を排除した洗練されたプロダクト」は樋口さんのこだわり。ゆうじではオリジナルプレート(シリアルナンバー入り)が付いているものを使っている。
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- POINT 03誰もが使える安全性の高さ
- 厨房の中ではなく、お客様がテーブルで使うものだから、安全性には十二分に配慮。最初の試作品はテスト中にテーブルが焦げてしまうほど本体が熱くなってしまったが、試作を繰り返すことで誰でも安心して使えるものに。
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釜浅商店との商品開発
「ゆうじ」を始めた時から、料理道具を探しに合羽橋には足を運んでいたという樋口さん。釜浅にも10年以上前から来ていただいており、店内をぐるぐる回っては、頭の中にぼんやりと浮かんでいた「こういう道具が欲しい」という気持ちにピタッと合致する商品を購入してくださっていたといいます。
そんな樋口さんはある時「料理を進化させるために現場で苦しむ料理人たちが、本当に自分が必要とするものを手に入れたいのであれば、あるものを買うのではなく、欲しいものを作ることが重要なのかも」ということに気づいたそう。そこで熊澤に声をかけてくださったことが、「YK-T」の開発に結びつきました。
樋口さんが日本中の焼肉屋を食べ歩く中で気づいたのが、肉・タレ・カットといった様々な要素の中で、ロースターこそが焼肉の美味しさを決める最大のキーパーソンであること。「焼き台を見れば、その店の基本的な立ち位置が見える」といいます。
本当に味わい深い店は、昔ながらの七輪や、他では見たことのないオリジナルのロースターで、みんなが煙にまみれながら肉を焼いている。そこで、熱源として最良なのはガスではなく、炭火だという結論に至ったのだそうです。
木炭は燃焼する際に遠赤外線と呼ばれる電磁波を発します。この遠赤外線は風などの影響を受けず、物質に直接熱を届けることができます。ガス火の熱は物質を通過しないため、薄い肉を焼く時にはいいけれど、厚いものを焼くのは難しい。火が強いと外が焦げて中は生焼けになるし、弱火で時間をかけて焼くと、肉の水分がどんどん抜けてしまいます。
このことから樋口さんは、ホルモンなどは効率よく熱を通し、脂も適度に落としながら焼くために網を、薄切りの肉を焼く時には250~300度に熱せられた鋳物網を、と使い分けることがベストと考えました。
「樋口さんから伺ったお話にはすごく納得するところがあって、世の中にない? それなら作りましょう、となった。一番のポイントは網が2種類使い分けられること。言ってみればそれが最大かつすべてなんですけど」(熊澤)。
早速、樋口さんの強いリクエストでもある「道具に徹し、装飾を一切排除したステンレス製のロースター」のたたき台を作ってテストを開始しました。
「見た目に関しては僕も機能重視でステンレスの無骨なロースターがいいと思っていましたので、外観は早い段階で『いいね』と言っていただきました。ところが、その後は何度も試作、また試作。お客様にテーブルでお使いいただくものですから、万が一お客様が触ってやけどをしてしまったら大変です。それでも、最初は本体が熱くなりすぎてしまったりもしました」(熊澤)。
風窓をつけるのをやめ、代わりに穴を開けることにしたものの、開ける高さによって温度が大きく変わるので、試作を繰り返したといいます。
「試作ができたら使っていただき、フィードバックしてもらう。わからないことだらけで、それでも『きっとこうなんだろうな』と、少しずつ改良を加えていきました」そう話す熊澤。
最終的に納品するまでに1年くらいかかりましたが、「すごく刺激的で勉強になる開発過程でした。あの期間があったことが、今の釜浅らしさが生まれた気がします」。
「炭火焼 ゆうじ」のために開発したこのロースターを、なんとか釜浅商店でも販売させてほしいと考えた熊澤は、完成が近づいた頃に樋口さんに無理を承知で依頼。最終的には「焼肉界全体のためになるから」と承諾していただきました。
誰もが美味しく肉やホルモンを焼けるように。そんな想いから出来上がった「YK-T」。完成から12年、「ゆうじ」では日々、最高の美味しさに人々が喜びの声を上げています。
一方、釜浅の店頭でも「YK-T」はロングセラーに。熊澤は「『ゆうじ』で使われているという信用も大きいけれど、見た目に惹かれて買ってくださっている方も多いようです」と話します。
面白いことに、樋口さんは熊澤に「『YK-T』は時速300km出せるスポーツカーと同じ。本当の能力がわかって乗りこなしている人は2割くらいだけど、それでいいんです」と話したそうです。
実は、「YK-T」という名前にも、共に熱烈なクルマ好きの樋口さんと熊澤のこだわりが。
「Yは『ゆうじ』のY、Kは釜浅のKなんですが、じゃあTは何かというと、初期型のポルシェ911、『911T』(1967年7月に発売された名車)のTなんです。つまり、YKの1号機という意味。ただ、今のところモデルチェンジはしていないんですけどね(笑)。樋口さんも僕もポルシェが大好きなんです」と熊澤は嬉しそうに話します。
今後、「YK-T」がポルシェ911Tが911E、911S、911RSとマイナーチェンジを繰り返したように発展していくことはあるのでしょうか?実は「ゆうじ」的にはまだアイデアがあるそう。
釜浅としても、新しい挑戦に身の引き締まる思いです。
住所:東京都渋谷区宇田川町11-1 松沼ビル1F
電話番号:03-3464-6448
営業時間:16:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:日曜日/祝日