「eatrip」が使う道具「釜浅のごはん釜」
- 現代の台所でも、鉄釜とかまどで炊いたご飯の美味しさを。
- ご飯は鉄釜とかまどで炊いたものが一番美味しい、と考える釜浅商店が、長きにわたる試行錯誤を経て、2019年に完成させた「釜浅のごはん釜」。熱伝導率がよく、蓄熱性も高い鉄製の釜と、吸湿性が高く香りがごはんに移りにくい木曽サワラ製釜蓋のコンビで、ふっくら&しゃっきりとしたごはんが炊き上がるのが特徴です。野村さんも発売時よりご愛用くださっています。
- 愛着メモ
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- POINT 01熱源を選ばずIHでも使える
- 2019年にeatrip soilを出店するにあたって、野村さんが頭を抱えたのが、IHしか使えないこと。「IHで使える道具って、私からすると料理が美味しく作れないものばかりなんですよね。でも、このごはん釜は違う。最初はガスと勝手が違うので多少慣れが必要だったけど、すぐ上手く使えるようになりました」。IHでもガスでも、同様に美味しく炊ける。
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- POINT 02保温が自然な万能選手
- 鉄器は熱伝導と蓄熱性に優れているため、炊飯時に火力調整をしやすいほか、蒸らしの際にも熱が逃げにくい。「保温が自然なところもいいですね」と野村さんもその実力に太鼓判を押す。「炊き込みご飯を作っても美味しくできますよ」とも。
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- POINT 03木曽サワラの釜蓋でふっくらと
- 油分が多く湿気に強いサワラ材の釜蓋は、蓋の裏側に釜に合った溝が入っているため、釜内の密閉性が高く、ふっくらとしたご飯ができる。
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釜浅商店との出会い
野村さんと釜浅商店のお付き合いは、2011年にリブランディングをしたあたりの頃から。以来、さまざまな機会にご一緒させていただいてきました。
熊澤
たぶん僕がきちんと友里さんを認識してご挨拶させてもらったのは、2011年のリブランディングのあたりだから……12年くらい前だと思うんですよ。ちょうど店の入口あたりの、フライパンのコーナーか何かをご覧になられている時にご挨拶したような。
野村さん
釜浅さんには以前から通っていて、たぶんバットとかをいろいろ買っていたんですけど、リブランディングちょっと前くらいに熊澤さんとお話ししたような気がします。
それで、新しいお店が出来上がって、おお!こう来たんだ!みたいな。外国人の友達も多いので、その後はよく連れていくようになりました。鉄打出しフライパンはその頃から使っているかな。
熊澤
そうですよね。ありがとうございます。僕は野村さんのラジオを長い間聴いていて、その時もとにかく嬉しくて、「いつも聴いています!」みたいなお話をしたような。その後、2014年にはその番組にも呼んでいただいて、さらに今年も呼んでいただいたんですよね。
野村さん
釜浅ってやっぱり熊澤さんなんですよね。一番楽しんでいると思うし、「いいものはいいでしょ!」っていう熊澤さんの姿勢が、社運に繋がっているのかなって思います。
熊澤
ええ! ほんとですか?
野村さん
うん。最初にお話を伺った時に、熊澤さんが「職人さんは名がない。彼らの作るものは作品とか表現じゃない、でもそこに逸品がいっぱいあって、それをみなさんにお伝えしたいんです」みたいなことをおっしゃっていて、すごく共感したんですよね。
私はいろいろ料理の仕事をやらせてもらっているけれど、基本的には料理って、一人一人が食を楽しんだり、人生を少し豊かにするようなものでもあるじゃないですか。でも、レストランの仕事はそれとはまた違って、人目に触れるようにしないといけない。当時、そういうことをいろいろ考えていたんですよ。
野村さん
そんな時に、熊澤さんは人目に触れないものに光を当てることをやり始めていた。いち早く海外の方にも目を向けていらしたのもすごいなと思いました。
店も、もちろん昔ながらの雑然とした感じも魅力的だったんですけど、わかりやすいリブランディングによって、それぞれの道具が引き立つようになったし、選びやすくなった。
合羽橋がいい意味で変わったじゃないですか。
熊澤
そう感じてくださっていたとしたら、すごく嬉しいです。基本的にはやっている仕事も扱っているものもリブランディング前と変わらないんですけど、もちろんそこには自信も持っていた。でも、だとしたらもっと多くの人の知ってもらうべきだよな、と思ったんです。
外国人のお客様に関しても、結果として増えてきただけ。でも、外国人の方が増えてきたなら、その方たちがわかりやすい方がいい、じゃあ英語の説明書を作ろうか……みたいな感じで、自然と変わっていった。
あとは友里さんみたいないいお客様たちにいろいろ教えていただきながら、それをお店や商品にフィードバックしてきました。
野村さん
そういえば、ちょうど(カリフォルニア州バークレーで1971年にアリス・ウォーターズが始めた、地元の有機食材のみを使用するレストラン)「Chez Panisse」に行き始めた頃だったかな。
世界中から来た料理人がみんなマイ包丁を持ち込むんですけど、それなら私は絶対和包丁を持っていく!と思って、何本か持っていきました。
熊澤
そうでしたか。
野村さん
海外のキッチンでも和包丁だけは特殊。例えば刺身包丁のように刃渡りの長いものって、海外にはないじゃないですか。それに萌える(笑)。鱧だけ切る包丁があるの?みたいな。今もどこかに行く時に持っていく包丁の中に、片刃は必ず入りますね。
熊澤
日本の道具って、それぞれの食材に対して用意されているじゃないですか。野菜の皮を剥くためだけの包丁とかね。このきめ細やかさが他の国にはないのかな、と思うんです。
今、日本の料理人が世界中で活躍していますが、彼らの繊細な料理の背景には日本の料理道具があるということを伝えていきたいですね。
釜浅では今、「和包丁のある暮らし」というのを裏テーマで活動していたりもするんです。「和」とついていながら、現代の日本の家には和包丁はほとんどないじゃないですか。このままだとなくなってしまうので、なんとかしたいと思っているんですよね。
「IHで使える釜」として重宝する「釜浅のごはん釜」
熊澤
ところで、友里さんは鉄のご飯釜はよく使っていただいています?
野村さん
すごく使っていますよ。ここは商業施設の中なのでガスが使えないんです。このごはん釜はIH対応で、多少慣れは必要ですけど、使いやすいので本当に重宝しています。
鉄だからやっぱり保温が自然だし、あとは私の場合、これで炒めものもしちゃうので。きのことかを炒めて、そのままきのこご飯にしちゃったり。
熊澤
なるほど。友里さんは土鍋も使っていらっしゃると以前伺いましたが、土鍋と比べてどうですか?
僕らは土鍋だと甘みのあるふっくらしたご飯が炊ける、鉄釜は逆アルデンテ、つまり中はモチモチで外はパキッとしたご飯が炊けるというイメージを持っているのですが。お寿司屋さんには鉄釜を使う方が多いんです。
野村さん
逆アルデンテ? うん、私もそれは思います。ただ、そこまで細かな食感というよりは、このお釜の持つ風合いみたいなものの方が、気に入っているポイントかな。
炊きたてのご飯と卵を混ぜておいしいチャーハンに
熊澤
そういえば、友里さんが小学生でも作れる料理レシピを紹介している『とびきりおいしい おうちごはん』、すごく素敵ですね! うちのスタッフも小学生の子どもと一緒に料理してみて、すごくおいしくできたと言ってました。
野村さん
ありがとうございます! あの本に関してはいい話しか聞かなくて。調理工程も全部イラストなんですけど、子どももデジタル疲れしているのか、「明日は何作ろう?」と言いながら全部音読してくれる、っていうメールをすごくたくさんもらうんです。
私もレシピとかを絶対見ないタイプなんですけど、写真じゃなくて絵だと意外と優しい感じがするから、みんな作る気になってるのかもしれないな、と思います。
野村さん
そういえば、最近焼き鳥が気になっているんですよ。海外でもすごく焼き鳥屋さんって増えているし、家でもやりたいなと思っていて。小さめの焼き台が欲しいなと思っています。
熊澤
ええ、そうなんですか! 焼き鳥、いいですね。小さい焼き台もありますよ。
野村さん
あと、実際に使ってみてすごく気に入ったのが、黒いまな板。
熊澤
「包丁にやさしいまな板 黒」ですよね。あれは自信作なんです。素材が酢酸ビニルで柔らかいので包丁の刃の当たりが他のまな板よりもやさしいし、黒いので素材がよく映えるしで、すごく扱いやすいんですよね。
厚みが2cmあるので普通の家庭用のまな板より重いんですが、その分安定もいいんです。
職人さんや産地を守るために
熊澤
さっき和包丁の話をしましたけど、僕らが扱っている和包丁にしろ、鉄釜にしろ、産地や生産者の減少は本当に深刻で、このままだと10年後にはなくなってしまうんだろうな、というところも多い状況です。
それには、きちんとその製品の本質や魅力を伝えきれてこなかった僕ら小売側の責任もある。まだ間に合うのだとしたら、そういうことも含めて丁寧にお伝えしていきたい。それによって、使うだけでなく、作る側になってみたいと思う人が出てこないとは限らないじゃないですか。
もっと産地や職人の方々のこともお伝えすることで、全体が健全な形で次のステージに行けるようにしていきたい。最近はそんなことを考えながらやっています。
野村さん
すごくよくわかります。本当に今、食だけじゃなく、衣食住全部について、昔ながらの作り手の人が減っている。私のお付き合いのある作り手の人たちの中には、自分たちで何とかしなくちゃと考える人も多くて、繋がりの中でいろんなことに挑戦しています。
農協に入らず、売るところまで自分たちで責任を持ってやる農家さんや酪農家さんもいる。木桶仕込み醤油のための木桶も作る人がいなくなってしまったから、小豆島のヤマロク醤油の山本康夫さんという方が「木桶職人復活プロジェクト」というのを2012年にスタートさせた。
その木桶を仕込みに使った日本酒も作られるようになっています。
熊澤
友里さんがすごいのは、農家の方をはじめ、いろんな人たちと一緒にいろんなことをやっていること。友里さんが入って、いろいろな人同士を繋げているのは素晴らしいことだと思う。
野村さん
東京に住んでいる私たちにもできることはありますからね。
熊澤
そうですね。これからもお互い頑張っていきましょう!
eatrip soil
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 4F
電話番号:03-6803-8620
営業時間:12:00~19:00(日曜12:00〜18:00)
定休日:月曜日