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- TOPICS
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- TOPICS 01鎌倉時代から続く刃物の街・関での包丁づくり
- TOPICS 02何を使うか”より“どう作るか”を重視したフジタケのものづくり
- TOPICS 03“永遠に変わることがない究極のスタンダード”を目指した包丁
- TOPICS 04つくり手、使い手、そして売り手。すべてがあってこその「amane」
つくる人包丁のフジタケ
- もともと兄弟で包丁メーカー、GT刃物を営んでいた現会長・後藤武さん(左)が独立し、1984年に創業。岐阜に後藤姓が多いことから藤と名前の武を足して社名は“包丁のフジタケ”とした。90年代に入ってから現社長で息子の智弘さん(右)が入社。現在は智弘さんを中心にさまざまな包丁を製造している。
TOPICS 01鎌倉時代から続く刃物の街・関での包丁づくり
釜浅商店の包丁売場を見ていただければわかる通り、包丁は形や素材がまさに多種多彩。和包丁・洋包丁でも全く違いますし、切る食材によって大きさも、また刃の形も違っています。釜浅商店が満を持して発表したオリジナルの洋包丁「amane」は、切れ味が良いことはもちろん、握りやすく、研ぎやすく、衛生的で耐久性に優れた包丁のシリーズ。シンプルを極めたデザインは、飽きずに長く愛される、普遍的なものをと考えられたものです。
釜浅商店がフジタケと取引をするようになったのは30年以上前のこと。特に14〜15年ほど前からは関係が深くなりました。「フジタケさんは仕事が丁寧だし、とにかくものがいい。お客様からもそう言われることが多くなっていったんです」と熊澤は振り返ります。
フジタケのある岐阜県関市は日本三大刃物産地のひとつ。関での刀鍛冶の発祥は鎌倉時代、寛喜元年(1229年)に元重という刀匠が移住してきたことに始まると言われています。当時の関には日本刀づくりに必要な、良質な焼刃土と水、炉に使う松炭が豊富に手に入りました。そしてその息子の金重が鎌倉の五郎入道正宗に弟子入りし、その弟子の志津三郎兼氏を伴い帰郷したあたりから、関鍛冶の名前は広まっていったといいます。
室町時代に全盛期を迎えた関の刀鍛冶ですが、江戸時代になり刀の需要が低下してからは、その技術を包丁や小刀、鋏といった家庭用の刃物に転用。現在もそれが続き、岐阜県は日本一の刃物産地となりました。2020年工業統計調査を見ると、包丁の出荷額は全国シェア57.4%。関市だけで見ても全国シェアの46.2%を占めています。
他の刃物産地と違い、ステンレス製の刃物がメインであるため、関市の刃物メーカーには鍛冶屋のイメージはありません。一方、プレス、熱処理、研削、研磨、刃付、柄付など、それぞれの製造工程が分業体制で行われているのは他の産地と同じです。その中で、フジタケは研磨、ひずみ抜き、仕上げ、柄付といった工程の多くを自社で行い、品質をコントロールすることにこだわりを持つ会社。会長の後藤武さんが職人だったお兄様に叩き込まれた、「お金儲けに走るのではなく、手間がかかっても良いものを作る」という考え方は、今のフジタケにも貫かれています。
TOPICS 02何を使うか”より“どう作るか”を重視したフジタケのものづくり
現在、会社を牽引しているのは、2代目社長の後藤智弘さん。昔気質の厳しさを持つ武さんの教えを守りながら、時代の合わせた柔軟な経営を行っています。
熊澤
フジタケさんの包丁はいろいろ扱ってきたんですが、シンプルな見た目ではあるけれど、使ったお客様に「良かったよ」と言っていただけることがすごく多いんですよね。
伊藤
そうですね。お客様によって重視されるポイントは違いますが、切れ味を求めたい方や、長く使う中での使い心地を求めたい方、形の合理性を求めたい方などには、フジタケさんの一枚鋼材(全体を硬度の高い金属一枚で作るもの)の包丁をお勧めすることが多いです。リピートされる方も多いんですよ。
熊澤
うちで扱わせていただいているものも含めて、今フジタケさんではどのくらいの種類の鋼材を使っているんですか?
智弘さん
V金1号*1 とV金10号*2 (「amane」)、粉末ハイス鋼*3 、ダマスカス鋼*4 、特殊鋼*5 ……。ロングセラーはV1だね。僕が入った頃にはV10はまだなかったんです。でも、鋼材が良ければ何でもいいわけではない。今は海外のお客さんなんかがめちゃくちゃ詳しくて、「硬度はいくつですか?」とか聞いてくるんだよ。でも、大事なのはどう作るかなんです。
TOPICS 03“永遠に変わることがない究極のスタンダード”を目指した包丁
熊澤
フジタケさんのそういう姿勢が素晴らしいんですよね。いろいろお話をさせていただき、うちとフジタケさんとの信頼関係ができていくなかで、僕らも「いつか一緒にオリジナルの良い包丁を作りたい!」という気持ちにどんどんなっていったんです。それで、やるなら非常に硬度が高く粘り強い性質で、切れ味の持続性が長いV10を使いたいな、と。
智弘さん
「amane」のお話をいただいて、「多くの人に長く愛着を持って使って欲しい」というテーマがいいなと思いました。そのために、ハンドルも口金もシンプルにしてね。そして何より最強だと思ったのが、和田君(注:ゼネラルマネージャーの和田洋一)の “究極のスタンダード”という言葉。パッと見は特徴がないけれど、使ってみれば長く愛せる。最高級より、究極のスタンダードと言われるほうが嬉しい。一番の褒め言葉だと思っています。
熊澤
そんな風に思ってくださったんだ! 嬉しいなあ。
伊藤
そういえば、釜浅商店の115周年のイベントの際、来てくださったお客様に各産地の説明をプレゼンテーションしたんです。その時にはまだ「amane」はなかったんですが、関の包丁のことは「いつまでも使い続けられるスタンダード」のように説明していたんですよね。
熊澤
もう一つの特徴が、峰から刃先に向けて徐々に薄くなり、断面が緩やかにカーブするように刃付を行い、欠けにくさと切り心地のよさを実現したハマグリ刃です。
智弘さん
ハマグリ刃は厚ければ簡単。でも、うちが目指しているのは薄いハマグリなんです。ただ薄ければいいわけじゃない、丈夫さも求められる。それを丁寧にやっていく。
熊澤
他の部分については、フジタケの包丁のいいところを取り入れました。ステンレスのツバ、黒い柄。握りには丸みを持たせて、長い時間使ってもストレスがないように。
智弘さん
見てくれだけで行ったら、(波紋が華やかな)ダマスカスには勝てないでしょ。でも、長く使うならこれがいい。おかげさまで今のところすごく売れているね。
熊澤
これを世界一の包丁にしたい! と会長ともずっと話してきました。「amane」はそれになれると信じています。
智弘さん
最初はね、「amane」と言われて意味もわからんかった。でも、聞いたとたんに「かっこいい!」と思ったね。だから、今じゃプレス屋さんや口金屋さんとも「amane」の名前でやりとりしています。
TOPICS 04つくり手、使い手、そして売り手。すべてがあってこその「amane」
伊藤
そういえば、フジタケさんは女性の職人さんが多いことも特徴ですよね。今、従業員は何人いらっしゃるんでしたっけ?
智弘さん
10人です。そのうち6人が女性で、3人は正社員です。柄付の作業は女性のパート3人が担当していますが、それだけでは間に合わないので、社員2人もヘルプで入ったりします。彼女たちは器用で丁寧だし、意欲のある人ばかりなんですよ。すぐ「やってみたい」と言ってくる。男性は1階で研ぎなどをやっているんですが、女性たちはそれも「やりたい」って言うんです。彼女たちは文句も言うし、うるさいけれど、頼もしいですよね。
熊澤
僕らは包丁を作っているわけじゃない。フジタケさんもはじめ、作ってくれる職人さんたちがいるからこそ、お客様に届けられる。それを僕らがちゃんとお客様にお伝えしていかないと、と思っているんです。
智弘さん
釜浅さんは正直なんですよ(笑)。うちはOEMだから、別に名前が出ることは考えていない。でも、出してもらえるのは今後のことを考えても嬉しいです。あと、僕らも職人さんたちを大切にしないと、ということは常に考えています。プレスや焼入など、いろいろな職人さんと月に5〜6回はご飯を食べに行って話をしている。卸問屋のミドリ刃物製作所の社長、髙島大輔も連れて、年に1回は職人さんたちとの旅行にも行ってるんです。
熊澤
そういうところがフジタケさんのすごいところ。僕らは売る側として、ちゃんとみなさんと同じ方向を見ていないといけないと思っています。
智弘さん
それで伊藤くんがしばらくこっちに勉強しに来てくれたんですよね。今では教えたことがちゃんとわかっている(笑)。
伊藤
関の包丁の作り方を学ぶことがメインの目的だったんですが、研ぎに関しても勉強したくて。1日や2日だと見学レベルになってしまうので、中に入って教えていただければもっときちんと覚えられると思ったんですよね。フジタケさんでの仕事で一番大事なのは、「歪(ひず)み抜き」と呼ばれる作業。次の行程に進む前に、必ずこの作業をして、歪んだ包丁をまっすぐに戻すことを徹底しているんです。時間や手間を厭わない仕事をされているということを改めて実感しました。
智弘さん
僕らが一番恐れているのは、価値をわかってくれるお客さんがいなくなること。売り手のレベルが上がればお客さんにも説明できるじゃないですか。包丁を研げる人間は、包丁の良し悪しもわかる。説得力が格段に違ってきますよね。
熊澤
「amane」は刃の裏側に釜浅商店のロゴマークが入っています。これまでフジタケさんで作っていただいてきた包丁には入っていなかったんですよね。会長に「なんで入れないんだ? 入れないのは無責任だろ」って言われて、今回は責任と自信、それに「世界に売っていこう」という気持ちを込めて入れました。
智弘さん
10年経った時に、今はダマスカスに夢中の外国のお客さんたちが「『amane』をくれ」と言ってきたら最高だね。
熊澤
智弘さんも会長も、さっきお名前が出たミドリ刃物の大輔さんも、皆さんが「amane」を広げたい、育てていきたいと言ってくれる。みなさんと一緒につくる“究極のスタンダード”を、頑張って多くの方々に伝えていきたいと思います。これからもよろしくお願いします!
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