釜浅ジャーナル
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店主の手帖#2 【Ventinove】(群馬県川場村)

店主の手帖#2 【Ventinove】(群馬県川場村)
創業明治四十一年 合羽橋の料理道具専門店 釜浅商店の四代目店主・熊澤大介が、東京の飲食店はもちろん、国内外の旅先で訪れた場所で感じたことのあれこれ、「食」を愛するものとして日々の活動を綴る手帖です。
熊澤 大介の写真
釜浅商店4代目店主熊澤 大介/Daisuke Kumazawa

薪火と地元食材が織りなす贅沢時間、シェフの故郷・群馬県川場村の客室付きレストラン

群馬県川場村にあるそのレストランの佇まいは、美味しいものと心地よい時間を約束された、ただそれはグイグイと押しつけがましいものでは無く、まるで優しい朝の光に包まれた、そんな空気を放ってる。


自然に囲まれた川場村の酒蔵『土田酒造』の一角に佇む

 

“Ventinove(ヴェンティノーヴェ)”
イタリア語で『29』という意味のそのレストランはオーナーの竹内シェフが9年間、西荻窪でやっていた人気レストラン『トラットリア29』を閉めて、少年時代を過ごした川場村に2022年にオープンしたフィロソフィーの詰まった場所。
西荻のお店にはオープンされる時に炭のグリルなどを買っていただいたのがご縁で、何度か伺い食事をさせていただいたことがあり、名物ビステッカの美味しさに毎回悶絶していたので、コロナのころに休業すると聞いてからはいつ、どこで、どんな形で再開するのかと楽しみにしていた。

そして、2022年に群馬に移転オープンというニュースを聞いてからは、ずっとこの日を待ち望んでいた。

最大の特徴は、食材は地元のものしか使わない、そして調理するための熱源は薪しか使わないということ。お湯を沸かす、ソースを温めるなどは薪かまどを使って、食材に火を入れるのは薪オーブンで、といった具合。

伺った5月は最もおすすめだという季節、力強い香りの様々な種類の山菜料理、彩り豊かな野菜をふんだんに使い最後に目の前で仕上げるサラダ、コロッケなどの前菜たちはこの後に待ち構えるメイン、地元牛のビステッカへの期待と食欲をさらに増進させる。

そう、この店名Ventinove(=イタリア語で29)とは、「ニク」の語呂合わせ、それほどに、肉への偏愛は並々ならぬものがある。食事のスタート時、薪オーブンに入る前に対面した骨付きの塊肉は一見焼き過ぎかなと見えるくらいに薪火でしっかりと焼かれ、表面はカリッと香ばしく、噛みしめるほどに肉!という旨味が口いっぱいに広がる。

インパクトのある見た目とは違い意外とあっさりと食べられる、のだが、さすがに食べきれないな、と考えているとなんと、食べきれない分は真空パックにして持ち帰りができるとのこと。なんて素敵なサービス!
お言葉に甘えてその提案にのり、もう一つの楽しみ、3種類まで頼める締めのパスタを。この日はトマト、ラグーの2種のパスタににリゾットの3種に。

デザートもいただき大満足の夜。 そしてこのVentinove、なんと一日一組限定で宿泊ができる。当然この日は宿泊付きプランでお願いしていたので、このまま2階の寝室へ上がって幸せのまま就寝。朝は身体にやさしいお粥の朝食まで。

シェフの人柄と、柔らかいユーモアで楽しいサービスの奥様が醸し出す本当に心地よい、帰りたくなくなる、そんなレストラン。
 
もう次の予約が待ち遠しい。

 

Ventinove

住所:群馬県利根郡川場村谷地2593の1(土田酒造敷地内)
定休日:月・火曜日

 

熊澤 大介の写真
釜浅商店4代目店主
熊澤 大介/Daisuke Kumazawa
1974年東京・浅草生まれ。アンティーク店「パンタグリュエル」(東京・恵比寿)、家具・カフェ「オーガニックデザイン」(東京・中目黒)を経て、家業である東京・合羽橋の釜浅商店に1999年入社。2004年より4代目店主に。創業103年の2011年に店のリブランディングを行う。良い理(ことわり)のある道具=「良理道具」を多くの人に伝えようと、道具たちとの幸福な出会いの場を国内外で提供する。