釜浅ジャーナル
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東京チェンソーズとつくる「東京の木のまな板」

東京チェンソーズとつくる「東京の木のまな板」
釜浅商店は、東京・檜原村を拠点に林業を営む東京チェンソーズとともに、東京で育った木を料理道具として届ける新たな取り組みを始めます。
その第一弾として、東京都内の神社にあった樹齢約200年の榧(カヤ)を使った「東京の木のまな板」を発売します。
この記事では、東京チェンソーズとまな板をつくることになったきっかけや、スタッフが実際に訪れて感じた東京の森のいま、そして未来の森と料理道具のために私たちができることをお話しします。
東京の木のまな板の詳細はこちら
釜浅商店スタッフ加納
KAMA-ASA STAFF 加納 充代 / Mitsuyo Kano
TOPICS

TOPICS 01まな板をつくるきっかけと東京チェンソーズについて

榧の切り株

こちらは、東京都内の神社で、ご神木として200年以上生きてきた榧(カヤ)の切り株です。
隣接する杉に倒木の危険があり、その伐採に伴って伐られることになっていました。

その知らせを受けた東京チェンソーズが現地で丸太を確認したところ、希少な榧であり、まな板に適した良質な柾目材※が取れることがわかりました。
そこで「この木を料理道具として活かせないか」と釜浅商店へ声をかけてくれたことが、今回のまな板づくりのきっかけです。

※柾目材…丸太の中心から放射状に切り出して得られる木材。丸太の中心からずらした位置で年輪に沿って切り出した板目材に比べて、反りや収縮・変形が起きにくい。

森の中に「東京チェンソーズ」と書かれた木の看板が立っている

東京チェンソーズは、東京・檜原村を拠点に、森林整備から木工品の製造販売、森林空間の活用まで手がける林業会社です。
林業を「森と暮らしをつなぐ仕事」と捉え、多様な取り組みを通じて森林の価値を街に届け、次世代へ続く持続可能な美しい森林をつくっています。

森の中の道にメガネをかけた男性が立っている

「自分が植えた木を、自分が収穫することはおそらくない」

今回、檜原村の森を案内いただいた、東京チェンソーズの吉田尚樹さんから聞いた、印象に残っている言葉です。

今伐っている木は、およそ70年前に誰かが植えて育ててきた木。
だからこそ、伐ったら植える。植えたら育てる。この循環を次の世代へつなぐことが、健康な森を維持し、水や空気を通じて私たちの生活にもつながっています。

自分たちの世代だけで完結しない長い時間の中で森と向き合い、次の世代へつないでいく。それが林業という仕事なのだと教えてもらいました。

TOPICS 02檜原村の森を訪ねて

東京チェンソーズが活動している檜原村は、東京都の最も西側に位置している、島しょ部を除いて東京都唯一の村です。その面積の約93%を森林が占めています。

最寄りの武蔵五日市駅から車で約30分。
進むにつれて建物が少なくなり、徐々に緑に囲まれ、山が深くなっていきます。

4人の人が山道を登っている

東京チェンソーズが管理する森に入ると、鳥の声がBGMになり、雨あがりの湿度や土の匂いを強く感じました。

そこで最初に教えてもらったのが、同じ緑に見える森にも違いがあるということです。

少し明るい緑に見えるのが、広葉樹を中心とした天然林。一方、濃い緑に見える場所の多くは、杉や桧(ヒノキ)などが植えられた人工林です。
戦前は薪や炭などの燃料として広葉樹が利用されていましたが、戦後になると建築材として利用するため、成長が比較的早く、まっすぐ育つ杉や桧が各地に植えられました。

しかし、木は植えてすぐに使えるわけではありません。木材需要が高まった時期には、戦後に植えられた木はまだ十分に育っておらず、海外からの木材輸入も増加しました。
その後、木が大きく育ったころには木材需要も落ち着いたため、十分に手入れが行き届いていない人工林が残ることとなりました。

木が生い茂っている

森を維持するには、人の手が必要です。

たとえば、森で見せてもらった樹齢約80年の杉。
適切なタイミングで周囲の木を間引きできなかったため、十分な日光を受けられず、光を求めて上へ伸び、樹齢に対して幹が細く育っていました。

「木を植えるだけでなく、育て、伐り、使うことまでが森をつくること」と森の中で聞いてから、目の前に広がる木々の見え方が確実に変わりました。

土から小さな幼木が生えている

森では、杉の種や、発芽して1~2年ほどの幼木も見せてもらいました。
まわりの木々と比べてとても小さく、木材として使えるようになるまでの途方もない時間を目で見たようでした。

私たちが販売している木製の料理道具は、この時間を背負っています。

時間だけではありません。
険しい斜面で木を管理する大変さ、シカやカモシカによる食害もあります。林業の担い手が減っている現実もあります。

多大な時間と手間をかけて育った木でつくられた商品を自らの手で販売することは、森や林業と人をつなげる重要な役割だと思いました。

TOPICS 03いざ、まな板をつくる

榧の木の板が積み重なっている

こちらは、まな板になる前の榧の木材です。
じっくりと乾燥させ、まな板に適した状態になっています。

実際に目の前にすると、まずその幅の広さに驚きました。これだけの幅が取れることからも、もとの木がどれほど大きかったのかが想像できます。

表面には、長い年月を生きてきた木ならではのさまざまな跡が残っています。
雨水などの影響による色の変化、虫がいたと思われる小さな穴、枝が生えていた跡である節。一本の木の中でも、生えていた場所や日の当たり方などによって色や表情は異なり、その理由がわからないものもあるそうです。

5人の人が机を囲んで話している

今回こだわったのは、約200年かけて大きく育った榧だからこそつくることのできる、一枚の木から切り出した「一枚物」のまな板です。
実際に、大きなサイズを一枚物で取れる部分は限られており、その希少さについても打ち合わせの中で何度も話題になりました。

一方で、天然木を均一な見た目だけで選別してしまえば、使える部分まで無駄になってしまいます。

そこで打ち合わせでは、色ムラや小さな痕跡について、一枚ずつ実物を見ながら「どこまでなら料理道具として問題なく使えるのか」を確認しました。
見た目に個性があっても使用に問題のないものは、その理由をきちんと伝えたうえで商品として届ける。一方で、食材が入り込むような穴など、使い勝手や品質に影響する部分は使わない。

木を無駄なく使うことと、料理道具としてきちんと使えること。その両方を大切にしながら、一枚のまな板にしていきます。

複数の人が木材を囲んで話している

東京チェンソーズには、木材を加工する工房があります。

まな板の細かな仕様を決める際には、私たちも工房を訪れ、実際の木を囲みながら、どの部分を生かすのか、どこを避けるのか、どのように仕上げるのかを一緒に確認していきました。

まな板の表面に施すのが、専用のかんな機でごく薄く削る「超仕上げ」です。

緑色の機械からまな板が出てきている

表面をごく薄く削ることで、木の道管や細胞をできるだけつぶさず、きれいに切りそろえていきます。表面がなめらかに仕上がるだけでなく、水をはじきやすくなるのも特徴です。

男性がまな板を見ている

こうして現場で一枚ずつ木を見ていると、同じ榧でも、色も木目も、残された跡も一枚として同じものがないことがよくわかります。

木の個性をどこまで生かし、料理道具としてどう仕上げるのか。

木そのものの良さだけではなく、それを見極め、加工する人の仕事があって、はじめて一枚のまな板になる。
そのことを、今回の打ち合わせを通して実感しました。

TOPICS 04日本の食文化を支えている森と人をつなぐ

良い道具には、良い理(ことわり)があります。

釜浅商店が考える「良理道具」は、使いやすさだけでなく、素材やつくり手、そしてその道具が生まれる背景まで含めて、良い理由を持つ料理道具です。

森の中に1本道が続いている

森は、清らかな水や豊かな食材を育み、古くから日本の食文化を支えてきました。
そして、森で育つ木々もまた、まな板をはじめとする料理道具に欠かせない素材として、私たちの暮らしの中で使われてきました。

木が育ち、道具として使えるようになるまで、長い時間がかかります。

だから、森の今を考えることは、未来の料理道具を考えること。そして、その道具が支えてきた食文化を次の世代へつなぐことでもあります。

森の中に4人の人が立っている

東京の森から生まれた木を料理道具へと仕立て、東京・合羽橋の釜浅商店から使い手へ届ける。

森で木を育てる人、料理道具をつくる人、そして毎日の料理で使う人。そのつながりをつくることも、私たちにできることのひとつだと考えています。

TOPICS 05商品の紹介

木との出会いは一期一会です。

森から生まれる木は、樹種も大きさも、その時々で異なります。
今回出会ったのは、約200年かけて大きく育った一本の榧でした。

まな板が2枚重なって置かれている

この榧だからこそつくることのできた、一枚の木から切り出した「一枚物」のまな板。
特に大サイズを切り出せる部分は限られており、わずか15枚しかつくることができませんでした。

素材がなくなれば、同じ榧で再びつくれるとは限りません。

そのとき森から生まれた木を、その木に合った料理道具へ。
今回の榧のまな板は、この一本の木との出会いから生まれた、今だけの「東京の木のまな板」です。

重なった2枚のまな板の側面

<榧の特徴>
1. 包丁にやさしく、心地よい刃当たり
適度な弾性と硬さがあり、包丁の刃先への負担を抑えながらスムーズに切り込むことができます。刻むときの触感が軽やかで、刃が当たる低い音が心地よいです。
2. 傷が残りにくく、水にも強い
しなやかな繊維構造による復元性があって、包丁による切り傷が残りにくいです。また、天然の油分を含み、抗菌性・耐水性を備えています。
3. 食材を邪魔しない、穏やかな香り
香りが穏やかで、食材への香り移りが少ないため、肉や魚、野菜など、さまざまな食材を扱う毎日の料理に使いやすい素材です。

<商品の仕様>
素材:榧
サイズ:小 幅30cm×奥行20cm×厚み3cm、大 幅40cm×奥行25cm×厚み3cm
価格(税込):小 9,900円、大 33,000円
取扱店:釜浅商店 合羽橋店限定
発売日:2026年10月13日


釜浅商店 合羽橋店では、榧以外にも様々なまな板をご用意しています。
まな板によって、重さや香り、お手入れのしやすさ、包丁への刃当たりも異なります。

ぜひ店頭で実際のまな板に触れながら、ご自身の料理や暮らしに合った一枚を見つけてみてください。スタッフが詳しくご案内させていただきます。

釜浅商店スタッフ加納
KAMA-ASA STAFF 加納 充代 / Mitsuyo Kano 
みそメーカー勤務を経て、2025年釜浅商店に入社。2人の子どもを育てながら、料理道具売場にて接客を行う。得意料理はとん汁、趣味はサワードウを使ったパン作り。