- 目次
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- 1 どんな包丁を研ぐ?
- 2 包丁の状態は?
- 3 自分で研ぐには何が必要?
- 4 包丁の研ぎ方
- 5 包丁を研ぐ意味は?
1 どんな包丁を研ぐ?
包丁の種類や状態によって研ぎ方や選ぶべき道具が少し異なります。研ぎたいお手持ちの包丁がどんなものか確認してみましょう。
1-1 両刃の包丁(洋包丁)
洋包丁は和包丁と比べて刃が薄く、そのほとんどが両面研いである所謂「両刃」を基本としています。三徳や牛刀は万能包丁と呼ばれ、あらゆる食材に対応しているものから、肉の塊を切るなど用途が限定的なものまで様々あります。包丁の状態によってシャープナーでの研ぎでも問題ありませんが、砥石での研ぎが必要な場合もあります。
1-1-1 三徳
ご家庭用の包丁として最もポピュラーなタイプの包丁です。牛刀と菜切の中間のような刃の形状で野菜・肉・魚、万能に使える、釜浅商店でも研ぎのご依頼が多い包丁です。
1-1-2 牛刀
欧米では牛刀がポピュラーな万能包丁です。サイズも豊富でご家庭用には18cm、21cmを、飲食店の厨房ではさらに大きな牛刀を使う料理人が多くいます。
1-1-3 ペティナイフ
刃渡が12cm〜15cm前後の、三徳や牛刀のサブ的な存在として使える小さい食材向けの万能包丁です。
1-2 片刃の包丁(和包丁)
和包丁は洋包丁と比べて厚みがあり、片面だけ刃が研いである所謂「片刃」になっています。魚を捌く、刺身を引くなど種類別に専門化されていて、会席料理や寿司など、日本料理の世界を中心に使われてきた日本古来の包丁を指します。研ぎには「砥石」が必要になります。
1-2-1 出刃
魚を3枚におろす分厚い包丁です。サイズ展開が豊富で魚の大きさに合わせて選べるようになっています。
1-2-2 柳刃
出刃に比べて薄くて細長く、魚を削ぎ切りから平造りまで刺身を引くための包丁です。肉のスライスに使うケースもあります。
1-2-3 鎌型薄刃 / 東型薄刃
切り口の美しさが求められる和食の世界において、野菜の桂むきやスライス、飾り切りなどの細工施す包丁です。
1-3 その他の包丁
中華包丁(両刃)、麺切り包丁(片刃)、パン切り包丁(波刃)などこちらも限定された人、用途で使用される包丁です。それぞれ両刃、片刃、波刃など様々で、研ぎには特殊な道具や熟練の技術が必要とされるので、基本的にはプロの研ぎに任せた方が良いでしょう。
2 包丁の状態は?
自分の使っている包丁の種類がわかったら状態を確認しましょう。一般的な砥石やシャープナーでは研ぐことができない、そもそも研ぎに適さない包丁もあります。そういった状態もしくは種類の包丁は買い替えをおすすめします。
2-1 研ぎに適さない包丁
2-1-1 穴の空いた包丁や凸がある包丁
この穴は食材を剥がれやすくするための加工ですが、刃先からこの穴の範囲までしか研げませんので研げる範囲が非常に狭くなっています。
注)ディンプル加工(くぼみ)の包丁の場合、刃が減ってくぼみに達しても研ぎ続けて使うことができます。
2-1-2 細くなり刃先が砥石に当たらない包丁
繰り返し研いで細くなりアゴがなくなった包丁は、ハンドルに砥石があたってしまうので、これ以上研ぐことはできません。
2-1-3 セラミック包丁
セラミック包丁の刃は金属とは違い所謂陶器でできています。専用シャープナーが必要で金属の包丁のように研ぐことはできません。
2-2 研ぐタイミングは月一くらい
1995年4月と1996年4月に帝京短期大学の学生206名に行った調査によると、やはり月に一回研ぐご家庭が多いようです。やはり包丁の良し悪しに関わらず、毎日使う包丁であれば月に一度くらい、切れ味が落ちきってからではなく、その前に研ぐのがおすすめです。切れ味が落ち切ってからの研ぎは手間がかかるだけでなく、刃の減りも多くなります。特にトマトや鶏の皮は切れ味のバロメーターになります。この2つの食材が滑らかに切れない時はすぐに研いだ方が良いでしょう。
2-3 こんな状態だったら自分で研いでみよう
大きな刃こぼれやサビもなく、単純に切れ味が落ちてきたのであれば、ぜひ自分自身で研いでみてください。プロの研ぎは仕上がりも良いですが、預けなければいけない期間や修理費用がかかります。ご自身でできる範囲の状態であれば、ぜひご自身の手で研いでみてください。
2-4 プロに頼んだ方が良いケース
2-4-1 刃に大きな欠けがある状態の包丁
下の画像の包丁には大きな欠けがありますが、研いで整えることによってまだまだ使えます。しかし、この欠けがなくなるまで荒砥石で一気に削り、形を整えるにはとても手間がかかりますので、プロに頼みましょう。
2-4-2 長期の使用で繰り返し研いできたため、鈍角になってきている状態の包丁
下の画像の包丁は、長期の使用で研ぎを繰り返し変形しているのと、使い始めは鋭角だった包丁も繰り返し研ぐことで薄い部分が減り、だんだん厚みが増して鈍角になっていきます。鈍角になった状態の包丁は、峰の方から厚みを落とすことで鋭角に戻り、切れ味が良くなります。厚み落としは包丁の産地のように道具が揃っていないと難しいのでプロに頼みましょう。
2-4-3 麺切り包丁(蕎麦切り包丁)
麺を作る工程は、生地を薄く伸ばしてたたみ、それを細く切っていくため、刃先が真っ直ぐな状態でないと切り残しが出てそば同士がつながってしまいます。麺切り包丁はたいてい刃渡りは30センチほどあり、10センチ以上の幅の広い包丁です。そんな包丁の刃先を直線的に研ぐのは熟練の職人の腕でないと難しいことなので、プロに任せてしまいましょう。
2-4-4 パン切り包丁
パン切りが研げるシャープナーもありますが、基本的に波刃の包丁はひと波ずつ特殊な道具で研ぐため、パン切りの研げるシャープナーが手元にない場合はプロに依頼しましょう。
2-5 釜浅商店の研ぎサービス
釜浅商店でも包丁のメンテナンスサービスを行なっております。お困りの際はお気軽にお申し付けください。 釜浅商店の包丁研ぎサービス
3 自分で研ぐには何が必要?
3-1 研ぐ道具は2種類「砥石」か「シャープナー」
包丁研ぎの代表的な道具には「砥石」と「シャープナー」の2つがあります。砥石は非常に古い道具であり、刃物を研ぐために使用されてきました。砥石は、石器時代から存在しており、最初は自然に形成された砥石を使用していたと考えられています。その後、人々は砥石を加工してより効果的に刃物を研ぐことができるようになりました。一般的にはご自身で研いでいる方が多く、シャープナーを使うご家庭が多いようです。
ウォーターシャープ
「リサーチパネル」が2017年に実施した包丁研ぎに関するアンケートによると、約5割以上の方が包丁を研ぎながら使っているという結果に。
続いて「フェリシモ モノコトづくりラボ」が2018年に実施したどのように包丁を手入れしているかのアンケートによるとシャープナーを使って研いでいる方が4割、砥石を使っている方が2割で半数以上の方がご自身で手入れしているようです。
シャープナーには、置いて使う「据え置きタイプ」と手に持って使う「棒状タイプ」の2種類があります。手軽に包丁を研ぐことができ、切れ味を回復させることができます。特に据え置き型は、刃を当てる角度を気にせず気軽に使えます。
3-1-1 砥石とシャープナーは「切れ味の持続性」が違う
では、この二つの差はなんでしょうか。
シャープナーは、刃物の状態を維持するためのメンテナンスや軽い研ぎに適しています。棒状や車輪状の砥石で刃先をギザギザにして一時的に切れるようにしていますので、厳密には「研ぐ」とは言えませんが、急いでいる時には有効な手段です。
一方砥石は、刃物の鈍った部分を削り取り、新たな刃を形成するために使用されます。研ぐ人の技術で差が出るものの、砥石で研いだ方が切れ味もその持続性も良く仕上がります。
シャープナーは特に技術はがなくても手軽に研げますが、砥石で研いだものに比べると切れ味が落ちやすい仕上がりです。また、両刃の包丁には使えますが、片刃や波刃の包丁には使えません。
砥石は、少し労力は研ぎ方を覚える必要はあるものの、切れ味も、切れ味の持続性も長い仕上がりになります。波刃の包丁をのぞいて、ほとんどの包丁に使えます。
3-2 砥石は4種類ある
砥石は用途別に大まかに荒砥石・中砥石・仕上げ砥石・修正砥石の4つのカテゴリーに分けられています。荒砥石・中砥石・仕上げ砥石は粒度によって番号が付いていて、粗いほど番号は小さくなり、細かいほど番号が大きくなります。
3-2-1 刃こぼれには「荒砥石」 粒度80~500番くらい
刃こぼれをした時に刃のかたちを整える粒度の荒い砥石です。荒砥石だけでは、まだ切れる包丁にはなりません。
あらと君 小 荒砥石♯220
3-2-2 切れ味を出すには「中砥石」 粒度800~2000番くらい
刃先を鋭くし切れる状態にします。切れ味が落ちた時や、刃こぼれなどない場合には、中砥石から研ぎ始めます。家庭用の包丁を研ぎたい場合にはこの中砥石を使うと良いでしょう。中砥で研いだ刃先は拡大すると細かいノコギリ状の刃をしています。この、のこぎり状の刃先で食材の繊維を裂き、食材を切ります。
シャプトン 刃の黒幕 オレンジ♯1000
シャプトン 刃の黒幕 グリーン #2000
3-2-3 切れ味をさらに良くするには「仕上砥石」 粒度2000番~
刃の表面を光らせたり、滑らかな切れ味にします。また、使うことで切れ味を長持ちさせることができます。仕上げ砥石で研ぐと滑らかな刃先になり、食材へのダメージを減らし、食材の断面を美しく仕上げます。食材の美しさを見せる和食の世界で、和包丁(柳刃、出刃、薄刃など)に仕上げ砥石まで使うことが多いのはそのためです。
※砥石の粒度の番号はメーカーの基準で決められているため、同じ数字でも粒度が違うことがあります。
※メーカーによってはもっと細かく分類していることがあり、荒砥石と中砥石の間に「中荒砥石」、中砥石と仕上砥石の間に「中仕上砥石」、仕上砥石のさらに上に「超仕上砥石」などもあります。
シャプトン 刃の黒幕 エンジ ♯5000
3-2-4 砥石のメンテナンスに「修正砥石」
包丁の切れ味のように砥石も使うごとに減り、上の画像のように中心部がくぼんで変形します。
変形した砥石を使用し続けると包丁の当たり方にムラができ、きちんと研げなくなることがあるので、砥石の表面は常に凸凹が無く水平な状態を保つため、何度か使用した後には削る必要があります。それを面直し(めんなおし/つらなおし)と言います。
修正砥石は面直しに使用する砥石で、初めて砥石を買う際に合わせて購入しておくと良いでしょう。
3-2-5 初心者におすすめの砥石
初めて砥石を使う方へのおすすめは中砥石と修正砥石です。中砥石は、和包丁・洋包丁問わず使う頻度が高く、切れ味を出すために重要な砥石です。修正砥石は砥石を長く使うため、ムラなく研ぐために必要なので、初心者の方ほど使った方が良いでしょう。
3-3 アルミホイルや陶器の裏での包丁研ぎはその場しのぎに
アルミホイルや陶器の底を使って切れ味を回復させる、という記事などをよく見かけますが、シャープナーと同様に刃先を棒状や車輪状の砥石で刃先をギザギザにして一時的に切れるようにしています。厳密に「研ぐ」とは言えませんが、急いでいる時には有効な手段です。器を使う場合は、キズがついても構わないものを使いましょう。
3-4 砥石やシャープナーが買えるところ
3-4-1 利便性なら100均、ニトリ、などの日用品が買える店舗
シャープナーは100均、ニトリ、IKEA、東急ハンズ、各種ショッピングサイト、スーパーの日用品コーナーなどで気軽に手に入ります。品質や値段もピンからキリまで様々です。
3-4-2 本格的な道具も揃う専門店がおすすめ
シャープナーも砥石もいろいろあって迷われるかもしれないので、初心者の方は包丁やメンテナンス用品をたくさん扱う包丁専門店で、店員のアドバイスを聞きながらの購入がおすすめです。包丁を販売している釜浅商店でも、もちろんシャープナー、砥石どちらも取り扱っております。
3-5 砥石で研ぐ場合、その他に準備するもの/あると良いもの
3-5-1 砥石がぶれにくくなり安全『砥石台』
研いでいるときに砥石が動くと、怪我や事故につながり危険です。砥石台は砥石がぶれないように滑り止めがついていて、砥石をはめて使います。
砥石ゴム台
3-5-2 水跳ねや砥の粉をいつでも拭けるタオル
研いでいる最中は水がよく跳ねるので、いつでも拭けるように乾いたタオルを準備しておきます。また、硬く絞って畳んだタオルを砥石の敷くことで、砥石台の代用品としても使えます。
3-5-3 砥石を水に浸ける大きめの入れ物
砥石は使う前には毎回水に浸けます(浸水不要の砥石もあります)。砥石全体が水に浸かるサイズの入れ物を用意して、研ぐ前にしっかり砥石を浸水します。
また、研いでる最中に砥石の表面が乾かないよう水をかけるときにも使えます。
3-5-4 衣服を水跳ねから守るエプロン
研いでいると水や砥の粉(とのこ)がはねるので、衣類を守るためにエプロンを着用しましょう。もしくは汚れても良い服装で研ぎましょう。
釜浅の研ぎ師エプロン
3-5-5 釜浅商店のイチオシ・砥石専用アロマウォーター“砥香”
釜浅商店では、スキンケアブランドOSAJIが運営するウェブメディア「OSAJI Journal」と共同開発した“砥香”という砥石専用アロマウォーターを販売しております。砥石の音や砥の粉の手触り、刃先の光りを確かめながら無心になれるメディテーションの様な包丁研ぎの時間を、香りでさらに愉しみ、こころを整えるための贅沢な時間にしてほしい。そんな願いで生まれた砥石専用アロマウォーターで、砥石で研ぎたい方にはおすすめの一品です。
砥石専用アロマウォーター“砥香”
4 包丁の研ぎ方
どんな包丁を研ぐか、研ぐ道具についてわかった所で、肝心の研ぎ方について動画で解説します。
4-1 シャープナーで包丁を研ぐ(動画)
両刃の洋包丁ならシャープナーでも研ぐことが可能です。砥石のように浸水時間もなく、さっと使えて便利です。非常に簡単に使うことができますが、切れ味を長持ちさせたい時は、砥石で研いだ方が仕上がりが良くなります。
4-2 洋包丁を砥石で研ぐ(動画)
4-2-1 両刃/洋包丁のつくりを理解する
洋包丁のように両刃の包丁にも「表面(A)」と「裏面(B)」があります。包丁の刃の構造が一枚鋼材の場合、好きな角度に研ぐことができますが、表7:裏3くらいに研ぐと切りやすくなり、皮剥きなどもしやすくなります。
包丁の刃の構造がダマスカスや三枚鋼材、割り込みの場合は、表面と裏面が同じ角度になるように研ぎます。
4-2-2 砥石を準備します
砥石は研ぐ前に毎回15分ほどしっかりと浸水させておきます。浸水していると砥石から気泡が出てきます。この気泡が止んだらしっかり浸水できています。
砥石台の上に砥石を置きます。砥石台がない場合は水気を絞ったタオルをたたみ、その上に砥石を置きます。砥石台やタオルの上に置くことで、ブレにくくなり安全に研ぎやすくなります。
4-2-3 洋包丁: 表面を研ぐ
①刃先が手前に向く(Aが砥石にあたる) ように、右手(利き手)で柄の付け根をしっかりと握ります。親指を刃先の近くにあてるとぶれずに握ることができます。左手(利き手と逆の手)は2〜3本の指で刃先を軽く押さえます。
※左利きの方の場合は、左右が逆になります。
②刃を10~15度くらいに立てます。
③包丁は切っ先からアゴまでの刃渡りを3〜4ブロックに分けて研ぎます。石の全長を使用して、②の角度を保ちながら前後に素早く動かします。このとき、包丁を何回前後に動かしたか数えながら研ぐといいでしょう。
④左手を当ててる箇所に研ぎカスが盛り上がる現象 = “かえり ”(バリとも言います)が出たら、次のブロックに左手の添え、同量のかえりが出るように同回数動かします。
4-2-4 洋包丁: 裏面を研ぐ
①刃を裏返し(刃先が手前と反対を向くように置きます)、右手は人差し指で刃先を押さえてながら握ります。左手は2〜3本指を添えて軽く押さえます。
②おもて面と同様、刃を10~15゜くらいの角度に立てます。
③おもて面と同様、石の全長を使用して、②の角度を保ちながら前後に素早く動かします。1枚鋼材の場合、好きな角度にすることができます。「表7:裏3」など表裏で角度を変える場合は、前後に動かす回数も同様に「表7:裏3」にすると良いでしょう。
ダマスカス・三枚鋼材の場合は、「表5:裏5」で研ぐことで、鋼材が中心に保たれるので、切れ味や切れ味の持続効果が発揮しやすくなります。
4-2-5 洋包丁: かえりをとる
仕上げに新聞紙や厚手のデニムなどでかえりをこすり取る“バリ取り”をします。バリ取りは非常に重要な作業で、これを怠ると
バリ取りをした後に刃先に光沢のある細い線(1~2mm程度)が均等にできていれば、しっかり研げています。かえりを落としたら包丁を洗い、しっかりと水気を拭き取ったあと、油を塗って保管してください。研ぎたての包丁は錆びやすいのと、金属臭がうつる可能性があるので、しばらく時間が経ってから使うのがおすすめです。
4-3 和包丁を砥石で研ぐ
4-3-1 片刃/和包丁のつくりを理解する
片刃の和包丁は特徴的な構造をしています。刃表には、平らな面の“平”と斜めになっている幅広い面の“切れ刃”、その2つの間にある“しのぎ筋”という線があります。さらに刃先には1mm幅程度の“小刃”という鈍角の刃がつけられています。小刃には刃の切れ味を保ち、欠けにくくする効果があります。刃裏には“裏スキ”という凹みがあります。これは、裏面の刃先を平らに研ぎやすいように作られた和包丁特有の構造です。
4-3-2 和包丁の研ぎ方
和包丁も洋包丁と同じく、刃渡りを数ブロックに分けて砥石の上を往復させて研ぎます。今回は刃こぼれや厚みが出てない状態で切れ味を戻す研ぎの方法で、中砥石からはじめます。
4-3-3 切れ刃を研ぐ
①刃表の切れ刃(A)を砥石に当て、ブロック毎に研いでいきます。
②切れ刃を研ぎ終わったら、次に刃先を研いで、“小刃”を出します。ほんの少し(名刺一枚分くらい)包丁の峰を上げて、刃先がわずかに砥石に当たるようにし、ここでもブロックごとに分けて研ぎます。研ぎ終わった刃先には光る線がみえてきます。この時、刃先に細く光る線が、均ーに出ているか確認してください。
③刃裏(C)は、包丁の裏面を砥石にぴったりつけて研いでいきます。裏面は、刃おもてを研いだ時に出る“かえり”をとるためなので5〜10回往復で十分です
④仕上げ砥石を使い、①~③の手順で刃おもてと刃うらを研ぎます。仕上げ砥石で研ぐことで、刃先の表面を磨いて切れ味を長く保つようにす ることができます。
4-3-4 かえり(バリ)を取る
研ぎ終わった後はかえりを落とします。洋包丁と同じ方法です。バリを残ったままにすると切れ味が良くなりません。かえりを落としたら包丁を洗い、しっかりと水気を拭き取ったあと、油を塗って保管してください。
4-4 砥石の保管方法
研ぎ終わった砥石は、砥粉(とのこ)を洗い流し水気を拭き取ります。直射日光の当たる場所には保管せず、室内の湿気の少ない場所で保管しましょう。屋外での放置や、急激な乾燥は割れる原因になるので注意が必要です。
4-5 研ぎ方をきちんと学びたい時は研ぎ教室へ
大切な包丁だから失敗したくないという方は、研ぎ教室に行って研ぎ方を学んでみるのもおすすめです。実際に砥石を使って研ぐので、砥石を購入前に包丁研ぎを体験することができます。
5 包丁を研ぐ意味は?
5-1 包丁は研いで使うと料理がおいしくなる
切れ味が良い包丁は正確に切れて調理が捗るだけではありません。栄養調理製菓専門学校の ある調査 を要約すると
1. 見た目
食材を綺麗に切ることができます。滑らかな切断面が得られるため、見た目が美しくなります。例えば、野菜や果物を切る場合、切れ味の良い包丁を使うと、均一な形状やきれいな断面が得られます。2. 食感
食材の切断面が滑らかになります。これにより、食材の食感が良くなります。例えば、野菜を切る場合、切れ味の良い包丁を使うと、シャキッとした食感を保つことができます。3. 風味
食材の切断面が傷つきにくくなります。これにより、食材の風味を損なわずに引き出すことができます。例えば、魚を切る場合、切れ味の良い包丁を使うと、魚の鮮度や風味を最大限に引き出すことができます。4. 保存性
食材の切断面に微細な隙間ができにくくなります。これにより、酸化や菌の侵入を防ぐことができます。食材の保存性が向上し、鮮度を長持ちさせることができます。特に、野菜や果物などの切断面に生じる微細な傷を最小限に抑えることができます。
つまり、研いで切れ味の良い状態が保たれることで、風味や食感、保存性、見た目にも良い影響を与えるのです。
5-2 研がないとパフォーマンス低下や怪我の元に
では反対に、研がない状態で包丁を使用し続けるとどうなるのでしょうか。もちろん切れ味が低下し続けます。切れ味の悪い包丁を使用すると、食材を切る際に力を入れなければならず、切りにくくなります。また、力を入れすぎると、食材が滑ってしまったり、ケガをする可能性もあります。 さらに、食材が綺麗に切れず、見た目や食材の質感に影響を与えることもあります。研がないで新品の包丁に買い替える、ということもできますが、まだ研げる状態なのであれば捨てずに、研いで使い続けた方が環境にもやさしく経済的といえるでしょう。
5-3 研ぐ前と研いだ後はこんなに違う
切れ味の良し悪しで、具体的に使い心地や仕上がりにどのくらい差があるのでしょうか。研ぐ前と研いだ後で、食材への刃の入りと、切断面を見てみましょう。
5-3-1 研ぐ前(切れ味が悪い状態)
食材にまったく包丁が入っていかないほど切れ味が悪くなった包丁です。食材を潰してしまい、これでは味も鮮度も劣化してしまいます。
5-3-2 研いだ後(切れ味が復活した状態)
シャープナーで研いだ包丁でトマトを切ってみました。包丁の動きが滑らかですっと包丁が入っていき、食材の断面もつやが違いスパッとしています。
包丁の切れ味は料理の仕上がりや保存にも影響を与えるため、やはり包丁を定期的に研ぐことは重要です。シャープナーで簡単に済ませることもできますし、砥石で本格的な切れ味を出すこもできます。特に砥石で研ぐことは、方法を身につければいつでも切れ味が良い状態を長く保つことができます。包丁を研ぐことは環境にもやさしく経済的で、切れ味が良い包丁は快適でおいしい料理が作れます。ぜひみなさんも包丁をご自身で研いでみてください。