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12 Rue Jacob
ジャコブ通り12番地、2018年の5月、僕たち釜浅商店はここにパリ店をオープンした。
パリ6区にあるこの場所は、近くにパリ最古の教会といわれるサン・ジェルマン・デ・プレ教会や、カフェ・ド・フロール、カフェ・レ・デュ・マゴなどの、サルトル、ボーヴォワール、ヘミングウェイ、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、カール・ラガーフェルド等々が常連の老舗カフェがあり、少し先にはセルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンが住んでいた家がそのまま残っていたりするよく最もパリらしさを感じるといわれるエリアだ。
敬愛する加藤和彦の曲にも「ジャコブ通り」というのがある。そんなこのエリアはギャラリーが多く、とりわけ紀元前の様な骨董品を扱う店が多くあり、我が店の隣にも博物館にありそうな品々がディスプレイされているギャラリーがある。
パリの中の日本
そして、ここ数年「パリの中の日本」といっても良い位、本物の日本を伝えようとしているお店が集まってきているエリアでもある。
例えば、店頭で手打ちで蕎麦を打っている、蕎麦前もとても美味しい「円(YEN)」はパリ出張の際には必ず初日に伺うほど好きで、2000年の開店時には合羽橋店で焼台などの道具を揃えていただき、指定された芝浦の倉庫まで配達に行った、とても思い入れのあるお店。
まさか、その時には自分たちがパリに出店するなんて夢にも思っていなかった訳だから、何とも感慨深い。
円(YEN)の外観(上)と手打ちのそば(下)。
それから、日本でも手に入りにくい作家の器を扱うギャラリー「1月と7月」、同じジャコブ通りにある「AREA Paris」は上質な家具や建具をデザインする日本のインテリアブランド、隣りの町会的なオデオンには友人が営む日本のコスメや器や文化を伝えるコンセプトストア「Biën;」がある。
インテリアショップ「BOLANDO」では畳まで売っていて、美味しいラーメン屋さんも2軒ある。
KAMA-ASA Paris周辺マップ
釜浅商店 初の海外支店 パリ店オープン
そんな場所に縁があって2018年に出店したわけなのだが実はこの場所、2014年にはじめて海外でpop-up shopを行った場所でもあるのだ。
当時は友人がやっていたギャラリーを使わせてもらってのpop-upで、その後、彼らの移転に伴ってその場所が空き、声をかけてもらい今に至っている。
釜浅商店 初の海外pop-up『日本の庖丁とその背景 -EXPOSITION VENTE DE COUTEAUX JAPONAIS-』。当時は「NAKANIWA」という名前のギャラリーだった場所(撮影:2014年)
2回目・3回目の海外でのpop-upは2016年5月・12月にフランス・パリのアトリエ・ブランマントで開催(撮影:2016年)。その後も2回ほどパリでのpop-upイベントを行なっている
最初のpop-upから本出店までの4年間は実店舗を構えることを明確な目標として毎年、多い年は1年の間に2回のpop-upを行ってきた。
今考えると途方もない労力と気力だったと思う。
そんな雲をつかむような話に付き合ってくれて、惜しみない力を注いでくれた仲間には本当に言葉では言い尽くせないほどの感謝をしている。そして彼らは今もなお、その力を注ぎ続けてくれている。
ジャコブ通りに面した門を抜けた先に中庭が広がり、その右手に釜浅パリ店がある
今、パリ店は3人の個性的、かつ優秀なメンバーによって営まれている。東京とパリ、物理的な距離は離れているけれど、同じ光の先を見て一緒に仕事ができている奇跡にも感謝している。
ジャコブ通り12番地、この先、まだまだいろんな事が生まれていくであろう、この大切な場所。ちょっと遠いけれど、機会があれば是非!
KAMA-ASA PARIS
住所:12 Rue Jacob, 75006 Paris, France
定休日:水・日曜日・祝日
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