しゅろのやさしいたわしの詳細はこちら

- TOPICS
-
- TOPICS 01偶然が重なって始まった、釜浅商店とのお付き合い
- TOPICS 02フライパンと、鍋と、まな板と。名バイプレーヤーとしての立ち位置を確立
- TOPICS 03グッドデザイン賞も受賞した「しゅろのやさしいたわし むすび」
- TOPICS 04家族を中心とした精鋭チームで多彩なアイテムを製品化
つくる人高田耕造商店
- 1930年(昭和5年)頃、高田大輔さんの曽祖父である要さんが自宅で棕櫚製品の加工を開始。戦後の1948年(昭和23年)に祖父の耕造さんが高田耕造商店を創業、棕櫚たわしの製造を始める。1970年(昭和45年)には父の英生さんが代表に就任。2000年代前半に大輔さんが家業に参画、2008年(平成20年)に英生さんが株式会社コーゾーを設立。現在は大輔さんを中心に、多彩な棕櫚製品を製作している。
※「高」の正式表記は「髙」(はしごだか)ですが、記事中は常用漢字を用いています。takada1948.jp/
TOPICS 01偶然が重なって始まった、釜浅商店とのお付き合い
鉄のフライパンや中華鍋などといった、洗剤を使いたくないもの洗うのに最適な棕櫚のたわし。コシがあり、優しく、しかししっかりと汚れを掻き出します。柔らかく傷をつけないので、食器を洗うのにもぴったり。また、熱に強いので熱湯消毒もでき、清潔な状態を保てるのも魅力です。和歌山県海南市を拠点に、そんなたわしをはじめとした棕櫚製品を長らくつくり続けているのが高田耕造商店。職人の手でひとつひとつつくられるたわしは、一般家庭でも、またプロの現場でも愛されています。

柔らかくコシがあり、握り心地も気持ちのいい「しゅろのやさしいたわし」。素材を傷つけることがないので、鉄や木からガラスや陶磁器まで、幅広く使える。
釜浅商店でも、高田耕造商店のたわしは常に売れ続けるベストセラー。お付き合いは2011年に始まりました。もともと家業を継ぐつもりがなく、料理の世界に進んだ高田さんが、地元に戻り、レストラン勤務を経て父の英生さんを手伝うようになったのは20代半ばのこと。最初は後を継ぐつもりは全くなかったそうですが、取引先に連れていかれるたび、英生さんが「息子さんが戻ってきてよかったね」と言われる様子を見て、次第に意思が固まったのだそう。そんな中、大輔さんが東京での営業の際に立ち寄ったのが釜浅。まだリニューアルしたばかりの頃でした。

海南市の株式会社コーゾーにて。後ろには高田耕造商店の幅広い製品群が。
高田さん
リニューアルしたというのを雑誌で見て、行ってみたんです。ちょうど僕の同期が地元にレストランをオープンするというので、包丁をプレゼントしようと思って。当時の釜浅さんでは別のメーカーのたわしを扱っていたし、そこに割り込みたいという気持ちはさらさらなかったので、嫌らしい気が起こらないように(笑)、自分の営業の荷物を和歌山に送り返してから行ったんですよ。合羽橋に行くのも初めてでした。
出張でよく泊まっていたビジネスホテルからは、建設中のスカイツリーが見えたんです。行くたびに少しずつ高くなっていく姿を眺めながら、「いつかこの場所で仕事ができたらいいな」とぼんやり思っていました。
和田
そうか、スカイツリーはまだできてなかったんですよね。2012年5月のオープンだから。
高田さん
そうなんです。なんでスカイツリーのふもとでやりたいと思ったかというと、当時、うちは「日本一(値段の)高いたわし」っていうので売っていたから(笑)、和歌山でも大阪でもビルとか通天閣のイベントとか、高いところにご縁があって。それにしても、合羽橋は大阪の道具街とは全然違う雰囲気で、びっくりしました。それで、釜浅さんに行って、包丁を見ていたら「何料理をされているんですか?」と聞かれて。
和田
ええ、そうでしたか。包丁を持つ手つきとかを見てお声かけしたんですかね?
高田さん
そうみたい。それで、「今はもう辞めてしまって」って言ったら、「今は何されてるんですか?」ってもう1回突っ込んできたから、「実はたわし屋なんです」って。そしたら「棕櫚ですか?」って言われたんですよ。当時は、営業に行っても棕櫚かどうか聞かれることなんてなかったんですよ。たわしに種類あるの? いろんな形なんている? 皿洗うならスポンジあるやん、みたいな。棕櫚までいかないですよ。それが「棕櫚ですか?」って聞かれたんで、たわし屋ってことは隠そうと思ってたけど、やっぱり出ちゃうよね(笑)。

製品になるのを待つ棕櫚素材。繊維の太さや硬さを使い分けて、様々な商品をつくる。

カットした棕櫚を巻き終わった状態。
和田
いや、その頃、本当に探してたんですよ。高田さんがおっしゃった通り、パームたわしはあったんです。ちょうど鉄のフライパンが売れてきている頃でもあって、“鉄のフライパンを洗うのはたわし”っていうのは決まっていたので。でも、棕櫚がいいってことで、うちの社長も京都に棕櫚のたわしを卸して欲しいって頼みに行ったりもしていたんですよね。でも、なんか違うかな、って。そんな時に、たわし屋さんがやってきたんですから(笑)。
高田さん
そうそう、それで「社長を呼んできます!」って言われて。でも、さっき言ったようにこっちは営業することなんか考えてないし、荷物は送り返してしまっていましたから、熊澤社長も困ったと思いますよ。持っているオリジナル商品は「たわしストラップ」くらい(笑)。でもこっちはテンションが上がってしまって、結局包丁を買うことも忘れて、「帰ったらすぐ送ります!」って言って帰りました(笑)。
和田
後日、高田さんからたわしを送ってこられた時のことを今でも覚えてるんですよ。パームたわしを扱っていたメーカーでも棕櫚のたわしを出していたけれど、そこのは当時400円台。でも、高田さんが送ってきたのは700円くらいで、あとは3000円くらいの紀州棕櫚のたわし。正直、「え? たわしに700円?」ってなりましたけど、うちの社長とかと話して、「これはいける!」ってことになって、扱い始めたんです。展示会もやりましたよね。
TOPICS 02フライパンと、鍋と、まな板と。名バイプレーヤーとしての立ち位置を確立

2012年12月に釜浅商店で開催した「にっぽんのたわし—伝えたい棕櫚の魅力—」展の様子。高田耕造商店の製品のほか、たわしづくりの機械なども展示された。
高田さん
そうそう。僕が行った時に、当時の2階のギャラリースペースで、確かエイトブランディングデザインの展示をやってたんですよ。それで、社長と和田さんに「展示会しませんか」って言われたの。でもそんなんしたことないんで、とりあえず和歌山に帰って仲間に相談したんです。そしたら「面白い」って。でも、とにかく資金がないから、トラックを借りて自分たちで運転して、ホテルも上野の格安ホテルに泊まって(笑)。
和田
展示会は新聞に紹介してもらったりもして、ずーっと盛況だったんですよね。それで7日のところを10日くらいに延長した。社長(英生さん)にたわし巻きの実演もしてもらいました。

「にっぽんのたわし」展の際は高田英生代表によるたわしづくりの実演も。

「にっぽんのたわし」展には紀州棕櫚の現物も登場。
高田さん
そうそう。10日やって、一度和歌山に帰って、それからまたトラックで引き上げに来た。その時には、撤収の手伝いで連れてきた当時のスタッフと、スカイツリーが見えるいつものビジネスホテルに泊まったんだよね(笑)。懐かしいなあ。でも、最初にスカイツリーのふもとで仕事をしたい! と思ってから、そんなに時間が経たないうちに、スカイツリーが見えるギャラリーで展示会やってるんだから、ほんとびっくりですよ。最初は何から置いてもらったんでしたっけ。
和田
「大根にやさしいたわし」と「うつわにやさしいたわし」、「かかとにやさしいたわし」。ただ、最初はその名前で売ってましたけど、それだとお客様が固定観念でこれ用、って考えちゃうから、うちだけは「しゅろのやさしいたわし 小」とかにしてくださいってお願いしたんですよね。あとは紀州産棕櫚の小さいのと、シダのささらかな? ささらはお願いしてつくってもらいました。最初は5種類くらいしか扱ってなかったんですよ。

揃いのトレーナーには高田耕造商店の代表的な商品のイラストが。
高田さん
僕らは「このたわしは何に使うもの?」ってめっちゃよう聞かれるんですよ。それで、こんなことにも使えるんだ、っていうのがわかるように、特徴的な名前をつけていたんです。
和田
それにしても、さっき言ったように、最初は値段的には難しいんじゃないかって思ってたんですよね。たわしって百均にも売ってるし、感覚的に安いものなのに、高田さんのたわしはかなり高い。でも、お客様に商品の説明をしたり実際に触っていただいたりすると、納得して買ってくださる。うちとしても、特にフライパンと併せて必ずお勧めするようになりました。
高田さん
スタートダッシュみたいなのはなかったんですよ。でも半年くらい経った頃かな? 販売数がどんどん増えてきて、10個が20個になり、100個、200個と増えていったんですよね。
和田
最初はビニールのパッケージに入った状態で売ってたんですよ。でも、お祭りの時に全部パッケージを外して、大きな容器に入れて、そこに値札を立てて店頭に出したら、お客様がみなさん触って買ってくださって。たわしの良さは触った時の感触やサイズ感、洗う時の使いやすさなどですから、触ってもらうのが一番。そこから高田さんに「パッケージなしでお願いします」って言ったんです。

高田さん
そうだったね。でも、そういうことは釜浅さんでしかできないですよ。やっぱりたわしから粉とか毛とか落ちたりすることもあるので、袋に入れておかないと、お店に並べた時に他の製品に迷惑がかかっちゃうじゃないですか。何かあった時の連絡先とかを入れておきたいってこともあるし……。ところが、和田さんは「このままでいいじゃないですか」って言う。そしたら、そこからは出る数が飛躍的に増えました。
和田
高田さんのたわしは名バイプレーヤーなんですよね。
高田さん
僕らもそれに気づいたのが強みになったよね。以前はおひつとかフライパン、鍋と同じ、メインのプレイヤーとして考えていたけれど、ある時「フライパンが売れなければたわしは売れない」ことに気づいたんです。なんで僕たちは、(姫野作.の)鍋の姫野さんとかもそうだけど、周りの人たちに仲良くしてもらえるんやろな? って考えたんですよ。そしたら、あ、同業やないやん! って。

たわしと並んで鉄フライパンを洗う時などに活躍する「しゅろのやさしいたわし ささら」の製造風景。
和田
姫野さんの鍋もそうだけど、いい道具って安いものじゃないじゃないですか。大切に使いたいから、そこでちゃんと適した手入れ道具も必要になるわけです。それで、高田さんのたわしなら自信を持ってお勧めできるので、スタッフも併せてお勧めするようになったんですよ。鍋の分だけたわしが売れ、フライパンの分だけたわしが売れる。おひつとかの木製品にもたわしは威力を発揮します。そうなると、たわしだけを買いに来るお客様も増えてきて。「使ってみたらよかったので、もっと欲しくなって」というわけです。
高田さん
鍋やフライパンは消耗品じゃないけど、たわしは消耗品ですしね。
和田
そうなんです。あと、「野菜」というワードはみなさんに響きます。よく「たわしだとフライパンが傷つくでしょう?」と言う方がいらっしゃるんですよ。そしたら、「たわしで野菜を洗いますよね? 野菜とどっちが硬いですか?」と聞き返すんです。
TOPICS 03グッドデザイン賞も受賞した「しゅろのやさしいたわし むすび」

「釜浅のごはん釜」を開発していた際に依頼して生まれた「しゅろのやさしいたわし むすび」。手の中に収まるサイズで釜の中も洗いやすい。
和田
「しゅろのやさしいたわし むすび」は一緒に開発させてもらった商品ですよね。うちのごはん釜を開発していた時に、鉄の釜の内側に皮膜を張るんですが、普通のたわしで洗うと留め具の部分がガリガリって当たるから剥がれちゃうんですよ。それで、大輔さんに「これ(留め具)を取ってください」って。
高田さん
留め具が外に出てなければいいわけじゃない? うちには「しゅろのやさしいたわし ねじり」っていうたわしが既にあって、それも金具は外に出てないから、それを持っていったんですよ。でも和田さんが「欲しいのはこれとはちょっと違うんだな……」って。それで1年くらいああでもない、こうでもないってやってたんですよね。
和田
ごはん釜自体、釜浅にとってもアイコン的な商品、力を入れていく商品として開発していたので、それ専用のお手入れ用品がどうしても欲しかったんです。
高田さん
本当になかなかOKが出なかったから、「むすび」ができた時、これでダメならもう諦めてもらおうと思いながら東京に行ったんですよ。実はこれ、もうあかんと思っていた時に父親が奥の方から出してきた、リング状のたわしが鎖みたいに繋がったものが元になってるんです。たわしが全く売れない時代に「認知症予防!」って父親が遊びでつくった道具なんだけど、「これなら留め具が隠れとるやん」って。ただ、和田さんからのリクエストは1000円以内。これだと材料がたわし2個分にあたるから1500円になっちゃうんですよね、って言ったら、和田さんがあっさり「いいですよ」って言ってくれたんです。
和田
そうでした、そうでした。

「しゅろのやさしいたわし むすび」の説明パネル。もちろんごはん釜だけでなく食器や野菜を洗うのにも活躍する。

「しゅろのやさしいたわし むすび」用にカットされ、巻かれるのを待っている棕櫚。
高田さん
僕が覚えてるのが、それまではうーん、うーんって唸っていた和田さんが、これを使った瞬間に「うぉー、気持ちいい!」って言ったこと。これ、「ねじり」に比べて、釜に当たる接地面が広いんです。「気持ちいい」という感覚は、鍋肌に棕櫚の繊維がしっかりと接し、擦れ合うことで生まれる、手に伝わる程よい抵抗感のこと。よく調理師の人に「まな板を洗う時にたわしが吸い付く感じがする」って言われるんですけど、それと同じです。
和田
見た目も「あ!」って思ったけど、使ってみるとフィット感がすごくあって。それで「これを製品化しよう!」となりました。そこで、「じゃあ名前どうする?」ってなったんですよね。
高田さん
僕は「くさり(仮)」ってつけてたんですよ。そしたら母親が「センスない。『むすび』は?」って。僕からすると、これは結んではいないのよ。でも、母親の頭にはふわっとそのイメージが浮かんできたんだって。でも、結果的にそれを採用してよかった。
和田
これは2020年のグッドデザイン賞 にも出したんですよね。
高田さん
コロナ禍の真っ只中だったんだけど、和田さんが「うちはごはん釜で出しましたよ。これが応募書類だから、一応出してみたら?」って。たわしの形を変えたくらいでグッドデザイン賞なんか取れるわけがないし、たわしでは既にロングライフデザイン賞を取ってる商品があるから無理だって思ったんですけど、和田さんがそこまで言うならと思って出したら、受賞できたんです。お陰様で、釜浅さんとこで扱ってもらってるたわしの中でも「むすび」はめちゃくちゃ売れているほうで、去年は年間3500個くらい出たんですよね。すごくないですか? 釜浅さんでは「むすび」だけで1日10個くらい売れるってことですよ。

釜浅にとっても和田にとっても、高田さんは新たな世界を見せてくれる、頼れる存在。
TOPICS 04家族を中心とした精鋭チームで多彩なアイテムを製品化
和田
すごいです。ところで、高田さんのところにはたわしや箒など、ものすごくたくさんの種類の商品がありますよね。特にニッチなものっていうと何ですか?
高田さん
本当にいろいろあるけど、競馬の馬の毛並みを揃えるためのやつとか、酒屋さんの一斗瓶洗い、蕎麦屋のせいろ洗い、それから洗うものじゃないけど、ささらのドラムスティックもつくったな。ストロー洗いとか糊刷毛とか、いっぱいあるけど、大方のものがニッチだね。
和田
それって、お客様の方からリクエストがあってつくるんですよね?
高田さん
そうです。でも小売店さんからのリクエストはまだまだ少なくて……。弟が百貨店の催事で行った時とか、あとはメールの問い合わせとかで「こういうのが欲しいんだけど」って直接お客様から言われることが多いんです。そういう方は今使っている道具を実際に見せてくれたり送ってくれたり、どこが不満かを教えてくれるので、結構話が早い。そうやってもらったリクエストについて、うちは毎日11時半から12時まで、必ず全員参加のミーティングをしています。実は30分では全然終わらないんですけど、そこでああやないこうやないってのを日課としてやっています。

材料の棕櫚を手に。ほとんどの製品に使う輸入の棕櫚は国産のものに比べてコシが強い。

均一に並べた棕櫚繊維を針金で巻いているところ。ひとつひとつが手づくり。
和田
高田さんのところには今、何人いらっしゃるんでしたっけ。
高田さん
僕たち家族を含めて10人ですね。父母弟と僕ら夫婦と、あと5人でフル稼働です。父母も良い年齢なんで、改善はしていかないとと思っているんですけどね。人を採用するのは本当に難しい。僕なんかはものづくりが大好きだけど、たわしを巻けないんですよ。弟はうまいんですけどね。
和田
弟さんとはどのくらいご一緒されてるんですか。兄弟で働くのってどうです?
高田さん
弟の尚紀は大学卒業してすぐこの仕事に入ったんやけど、12、3年は一緒にやってますよ。仲間には兄弟で一緒に仕事なんて無理!という人もいるみたいですが、僕は出張でホテルの部屋が一緒でも全然平気。弟がどう考えているかはわかんないけど(笑)。でも弟のことはみんな可愛いんやろうね。うちのスタッフも「尚紀くんはいつ出張から帰ってくるの?」とか「次はどこに行くの?」とか、全部僕に聞いてくるんですよ。羨ましい。彼はInstagramの発信とかも頑張っています。弟が地方の催事に行くと、最近では6割くらいがInstagramを見てくれたお客さんなんだって。若い人がめちゃくちゃ増えているそうです。

「しゅろのやさしいほうき」をつくっているところ。床を傷つけず、綺麗に掃除ができる。

棕櫚を針金の間にきっちりと詰めて美しく巻いていく。代表の域にはまだ誰も到達できていないそう。
和田
代表は今おいくつですか? 全然、お若い感じですけど。
高田さん
69かな。でもこれからだんだんつくれる数は減っていくじゃないですか。難しいですよね。人を入れたいけれど、僕らの業界で人を採用するのは本当に難しい。もし来てくれても、たわしを巻けるようになる前にやめてしまう。僕らも会社の規模を大きくする気はないんです。それよりも、“いいものをつくっていく”という方向で行きたい。本当に僕らをわかってくれるお客様だけに届けばいいと思ってます。
和田
今でも、たわしを売るのは難しいと思う時はありますか?
高田さん
ありますよ。たわしって手間がかかる商品じゃないですか。だから、お客様には好きにしてくださいって言ってるんです。干し方もよく聞かれるので吊り紐をつけたんですが、今のキッチンって吊るところがないんですよね。だから、別にシンクのカゴにボーン! と入れておいていいんですよ。「雑菌が……」って言われるけど、それならスポンジも同じやないですか。一番いいのは朝昼晩と常に使って、流水ですすぐこと。たわしがヌルヌルしちゃうという人は、たまにしか使っていないと思います。
和田
たわしのお手入れはよく聞かれるところですよね。ご飯粒がついたらどうしたらいいんですか、とか。

高田さん
うちではたわしは手っ取り早く、熱湯をかけて消毒してます。ご飯粒に関しては、ワークショップとかに行くとだいたい聞かれますね。前は取り方を説明してましたけど、結局、ご飯粒がたわしにつくこと自体がもう問題やん? 最近では「うちの子どもたちがご飯粒を残したら、僕は怒りますよ」って話すようにしています。
和田
ところで、「やさしいたわし通信」っていうフリーペーパーを出されていますよね。紙と、あとはInstagramでも読めるけど、これがめちゃくちゃすごい。内容も面白いけれど、イラストがプロの腕前。どなたが描いていらっしゃるんですか?

「やさしいたわし通信」を一人で手がける馬野江美子さん。高田耕造商店の製品を紹介するだけでなく、暮らしの歳時記的なコラムなども。
高田さん
うちのスタッフの馬野江美子です。メインは「今月のフカボリ!」。1つの製品の物語を整理しながらやってもらっています。彼女は九州の人なんですよ。道具が大好きみたいで、もともと飲食の仕事をしていたんですが、合間に百貨店の催事に来てくれたりしていたんです。その後、何回かその偶然に出会うことも多く、弟が「最近何やってるの?」と聞いたらと「バイトしてます」と言うんで、「だったらもう、うちに来たら」って引っ張ってきたんですよ。そしたら、彼女が「もっとみんなにうちの商品の魅力を知ってほしい。新聞書いてもいいですか?」って。でも、絵は完全に独学なんですよ。カタログにも彼女の絵を使っています。海外の方々も、絵だったらわかるじゃないですか。

カタログのイラストも馬野さんが担当。わかりやすく美しい。
和田
そうなんだ!
高田さん
最初はこれ、A3サイズやったんですよ! でも、彼女は晩の仕事が終わってからこれを書くんで、ずっと新聞の〆切に追われるようになってしまって。それで、みんなでA4サイズにしてくれ、って頼んで、今の形になっています。でもこれにみなさんうちらしさを感じていただいて、「次号はいつですか?」なんて声もかけていただくので、嬉しいですね。

「にっぽんのたわし」展に登場した棕櫚の木。たわしなどに使うのは剥いだ皮の繊維。

海南市内の棕櫚山での皮剥ぎの様子。高田さんも師匠に教わりながら山仕事をするが、大変な作業だという。画像提供:高田耕造商店
和田
高田さんは紀州棕櫚の棕櫚山の再生にも取り組んでいらっしゃるし、たわし以外の繋がりもいっぱい持っていらっしゃるんですよね。例えば、紀州の備長炭がうちで扱えるようになったのは高田さんのおかげ。和歌山って東京よりもうんと長い歴史があるし、魅力が詰まっているところだと思う。高田さんには教えてもらうことばかりです。
高田さん
僕らも釜浅さんでしかできないことをいろいろやらせてもらっていますし、東京に行ってお店に顔を出すのも楽しみなんです。今後も、和田さんには突拍子もない相談を持ってきてほしいですね。待ってまっせ。


2児の父で、休日は釜浅の道具を使い家族に料理を振る舞う。趣味は筋トレ・格闘技(MMA)・サウナ。
執筆・編集:山下紫陽 撮影:釜浅商店

