今回はゼネラルマネージャーの和田洋一が、横浜金属団地にある工場を訪問、2代目社長の山田豊明さんの息子で3代目にあたる山田憲治さんにお話を伺ってきました。
釜浅の鉄打出しフライパンの詳細はこちら
- TOPICS
-
- TOPICS 01使えば使うほど料理がしやすくなる、鉄打出しフライパンの魅力
- TOPICS 02ハンマーで叩いて叩いて、強く長持ちするフライパンに
- TOPICS 03山田工業所の名作を一般の方にも使いやすくアレンジ
- TOPICS 04一緒に切磋琢磨して商品を作る楽しさと面白さ
つくる人山田工業所
- 現社長・山田豊明さん(写真右)の父が戦後間もなく廃材のドラム缶を叩いて鍋作りをスタート、1957年に横浜市にて山田工業所を設立。打出し製法(鍛造)で作る中華鍋が横浜中華街で圧倒的な支持を受け、次第に全国区に。現在は3代目に当たる山田憲治さん(左)を中心に、オリジナルの中華鍋やフライパンを製造するほか、OEMでの製造も行っている。
TOPICS 01使えば使うほど料理がしやすくなる、鉄打出しフライパンの魅力
熱伝導性・蓄熱性・保温性に優れた鉄のフライパンは、炒め物から焼き物まで、さまざまな料理に活躍する優れもの。中でも山田工業所で作られる丈夫で実用的な鉄打出しフライパンは、長年料理のプロに支持されてきました。このフライパンを、より一般の方々に使いやすいものにしたい!と考えた店主の熊澤は、山田工業所の山田豊明さん・憲治さん親子にご相談。出来上がったのが「釜浅の鉄打出しフライパン」です。
釜浅商店と山田工業所のフライパンとのお付き合いは、今から20年ほど前に遡ります。もともと山田工業所の主力商品のひとつである中華鍋は長く取り扱っていたのですが、その後、フライパンも仲間入り。2012年にはこちらをベースに仕様変更した釜浅商店オリジナルのフライパンの製造もお願いしました。
今回はそんな山田工業所の工場へ。この工場には、店主の熊澤はもちろん、和田をはじめとした釜浅商店のメンバーも何度もお邪魔しています。今回案内してくださったのは憲治さんです。
TOPICS 02ハンマーで叩いて叩いて、強く長持ちするフライパンに
工場に一歩足を踏み入れると、金属を叩く大きな音に驚きます。天井の高い工場空間を見やると、年季の入ったハンマー鍛造機やプレス機などが。ここで作られるフライパンや中華鍋は、いずれも鉄板をそれぞれの形に切り抜き、それをハンマーで叩くことで、立体的な姿に作られていきます。「打出し」とは、このハンマーで叩く作業のこと。2.3mmと少々厚めの鉄板を使う「釜浅の鉄打出しフライパン」は、4枚を重ねて15分くらい叩き続けることで、フライパンの形に変身します。
フライパン製造の工程には、この打出しだけでなく、同じく鉄板をカットして作る柄の部分を曲げたり、柄に刻印を入れたり、面取りをしたり、作業で生じたバリ(突起)を取ったり、柄を溶接したり、洗浄したり……といった多岐にわたる作業が。それぞれの作業は分業で行われています。
TOPICS 03山田工業所の名作を一般の方にも使いやすくアレンジ
和田
うちではまだ中華鍋だけを扱っていた頃から、山田さんのフライパンの素晴らしさは知っていました。合羽橋の他の店でも売っていましたから。その後フライパンも扱うようになったんですが、ある人気店の店主の方が、うちで買った山田さんのフライパンを愛用されているということで、雑誌で紹介されたんですよ。そのあたりからすごく人気が出てきて。それで、じゃあいろいろな方から出ているリクエストを反映した、うちのオリジナルを作ってもらいたいね、ということで、熊澤が山田さんにお願いしたんです。
山田さん
そうでしたね。もういつのことだったかあまりよく覚えていないけれど(笑)。ベースはうちの鉄打ち出しフライパンで。
和田
そうです。山田さんのフライパンではU形にカーブしている柄を少しフラットにして誰にでも持ちやすくしたり、その柄の角度を緩くし、また少し下げて付けることで蓋が閉まるようにしたり、平柄の接着部分をビスから溶接留めに変更して洗いやすくしたり。
山田さん
そうそう。最初は表面に錆止めのニスがかかっていたので、空焼きする必要がありました。それを釜浅商店のヴァージョンではやめたんですよね。それにしても、最初から20cmのものを100枚注文されてびっくりしたな。
和田
あれ? 最初はもっと少なくて、徐々に増やしていった気がしていました(笑)。当時は18cmから32cmまで、幅広いサイズ展開だったんですよね。後に20cmと26cmに絞っていただいて。毎月100枚はお願いしているから、これまでに1万枚は優に売れてますね。
山田さん
釜浅さんのおかげもあって、昔はプロしか使わなかったけれど、今は鉄フライパンが一般の人にも浸透しましたね。
和田
それは量販店を見るとよくわかります。2020年頃に某グローバルブランドが鉄フライパンを出した時に、ああ、当たり前になってきたんだなと感じました。それまでは「鉄は錆びますよ」とか、いろいろ説明しなくちゃいけなかったけれど、今では「わかります」という人が増えてきた。山田さんオリジナルの中華鍋も売れています。
山田さん
中華鍋も昔は業務用がほとんどでしたが、今では一般のお客様も増えました。業務用にも変化があって、両手鍋が減りましたね。昔は48cmとか51cmの両手鍋を茹で麺用に使うお店が多かったのですが、今は茹で麺器に取って代わられて。居酒屋とかだと片手の中華鍋を使う店が多いかな。
TOPICS 04一緒に切磋琢磨して商品を作る楽しさと面白さ
和田
ところで、憲治さんはいつからこのの仕事に入られたんですか?
山田さん
28年くらい前からかな。途中で抜けたりもしたのですが、ここでやって行くしかないとある時から腹を決めて。やりがいはすごくあります。釜浅さんにいろいろ相談を持ちかけていただいて、一緒に商品を作っていく楽しさ、面白さを知りましたしね。エンドユーザーの人たちの声を伝えてもらえるし、それが嬉しい。
和田
山田さんは相談するとちゃんと返してくれる。できないことははっきりとできないって言われるけれど、「こうだったらできるよ」ということをちゃんと提案してもらえるんですよね。ものを作るのが本当に好きなんだろうな、って思う。柄の素材をレーザー加工の会社でカットしてもらうようにしたのも憲治さんの提案から。
山田さん
通常のシャーリング加工だと面をバリ取りするのが手間なので、1つ仕上げるのに時間がかかってしまうんですよ。外に出すことで納期が短くなりました。
和田
山田さんと一緒に開発したもののひとつに、「塚田農場」さんの定番料理である「地鶏炭火焼」用の打出しの鉄板があります。厚さ6mmの鉄板に綺麗に槌目をつけた直径18cmの鉄板で、5分経過しても95℃程度の温度を保つことができるというものです。
山田さん
うちでも4.5mm厚のものは昔やったことがありましたけど、6mm厚は初めて。作っている最中に機械が壊れるかも!と思いましたよ(笑)。2400枚作りましたけど、釜浅さんから話が来なければやらなかった案件ですね。うちはものを作ることはできるけれど、売ることはできない。釜浅さんには感謝しかないです。釜浅ファンの人からうちに電話がかかってくることもありますよ。
和田
山田さんはもうちょっと天狗になってもいいのに、全然そういうことがなくて、無理なお願いも受けてくれる。根本的には釜浅もそういう仕事を重ねることで多くのお客様にご支持いただいているので、そういう意味では似ているかな。
山田さん
持ちつ持たれつですね(笑)。
和田
そうですね。これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2児の父で、休日は釜浅の道具を使い家族に料理を振る舞う。趣味は筋トレ・格闘技(MMA)・サウナ。